エンテロウイルスと麻痺

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エンテロウイルスと麻痺

 

 

2014年の夏。
米国やカナダにおいて流行したのがエンテロウイルス68型でした。1000人以上が感染し、うち死亡者が14人。
これにより免疫を持たない小児、気管支喘息の既往歴を持った小児などはこのウイルスにより、重症化もしくは死亡するリスクが高い傾向にあると言われています。

 

そして2015年。
日本でもエンテロウイルス68型が検出され「原因不明の麻痺(まひ)が起こる…危険なウイルス」などと騒がれました。ニュースや情報番組では不安を煽るかのように報道していましたが、本当のところはいったいどうなのでしょう。少し落ち着いた目線でみてみましょう。

 

そもそもエンテロウイルスにはいくつもの種類が存在し、重症化した結果合併症や急性弛緩麻痺などを起こし、手足にまひが残るケースも少なくありません。68型に限っては、発熱と同時に手足にまひが出ることがあることから危険なウイルスと言われたのでしょう。

 

エンテロウイルスそのものは、夏から秋にかけて流行る一種の夏風邪と言われるものです。夏風邪と言えば思い浮かぶのは、手足口病、ヘルパンギーナ、一般的な夏風邪…などですね。下痢や腹痛、発疹などの症状を伴うのがこれらの夏風邪です。

 

しかし68型に限っては、寒い時期でもないのに発熱、鼻水、咳やくしゃみなど、なんだか季節外れの風邪のような症状が特徴のようです。確かに夏でも、たちの悪い風邪…といった辛いかぜをひくことがあります。大人にとってはこれにかかっても軽症、もしくは症状が出ずに通り過ぎるもので、小児や児童、成人までの免疫の確立されていない子どもたちがかかると、重症化することがありますよ!というのが本当のところだと思われます。

 





発熱、くしゃみ、せき、鼻水といった軽度の症状から気管支炎、肺炎、呼吸困難、そして重症化により筋肉の虚弱化、脳神経機能の異常によるまひ…と経過をたどる場合。
または、発熱などに伴ってまひの症状が早い段階で出る場合など症状の出方はさまざまですが、どちらにせよ手足の動きに異常を訴える場合、もしくは見た目で動かすことが不自由そうな見解があったら68型の可能性があるので、すぐに医療機関を受診しましょう。

 

もともと喘息や呼吸器系、鼻や喉が弱いといった人は大人でも諸症状は出ます。これが子どもとなると、免疫が無いことが多いためどうしても症状が重くなりがちです。夏の暑い時期に、発熱や咳、鼻水などの症状は想像しただけでも辛いですね。しかもこの68型はぜんそくのような咳が出て、呼吸器にダメージを与えるという特徴を持っています。

 

このウイルスが発見されたからこそ、夏のインフルエンザのような風邪…だったものがどうやらエンテロウイルス68型の仕業だったということです。

 

ただの夏風邪と楽観視はよくありませんが、必要以上に危機感を覚えなくてもいいと思います。

 

ウイルスによる全ての疾患に言えることですが、ワクチンの有無に関わらず治す薬はありません。出ている症状に対しての対症療法(症状を緩和する投薬)となります。

 

感染した場合、重症化する前の早期発見と治療も大事ですが、やはり感染しないのが一番でしょう。手洗いマスクで徹底的に予防してください。